憲法上の人権規定の私人間に対する適用(予備試験令和元年・憲法行政法・短答 第1問)
以下、 芦辺憲法に準拠
基本
憲法の基本的人権の規定は、公権力から国民の権利自由を保護するものと考えられてきた。特に自由権は国家からの防禦権と捉えるのが通例。
しかし、現在では国家権力に類似する大きな力を持った私的団体が現れてきたため、このような「社会的権力」による人権侵害からも、国民を保護する必要があるだろう。
人権は、そもそも、公法・私法を包括した全法秩序の基本原則であるから。私人間の関係であっても憲法の人権規定はなんらかの形で適用されなければならない。
Word: 相対化
憲法の人権規定は国家と国民の間の規定である。そして、人権規定は国家に対して厳し目に作ってある。よって、それをそのまま私人間に適用することは不合理をもたらすだろう。以下の文章で頻出する「相対化」はこのことを加味して、バランスをとって人権規定を私人間に適用することを指す。
Word: 事実行為
法律行為の対義語。契約を結ぶのは法律行為。人をいじめるのは事実行為。法律行為ではない行為のことを事実行為という。
直接適用説
憲法の人権規定をそのまま私人間の関係に適用できるとする説。
中でも、相対化されて適用される説と相対化されない説があり。
相対化されて適用される説は間接適用説と実質的には同じである。
問題点
- 私的自治の大原則に憲法が踏み込むべきではない。
- 自由権・社会権が複雑化し、一方を追求すると一方が脅かされることが起こり得る。なので、現実に憲法を直接適用なんてできない。
- 憲法の人権規定はやっぱり国と人間の関係を規定するものだよ
間接適用説
民法1条、90条の「公序良俗」に憲法の人権規定を読み込んで私人間の関係に適用しようという説。(学説・通説)
その際、人権規定は相対化されて適用される。
人権侵害行為は
- 法律行為
- 法律に根拠を持つ事実行為
- 純然たる事実行為
のいづれか。
1,2なら間接適用説で対応可能。3は難しい。
参考:
問題点
- 純然たる事実行為の場合は、私法の規定がないので憲法の規定を適用する隙がない
State Action
3の場合に対応するための理論に、state action理論がある。
この理論は、事実行為が国家のやっていることと同一視できるならそのまま憲法の人権規定を適用しましょうという理論だ。
以下の二例の場合適用できるかもしれない。
- 公権力が当該行為に高いレベルで関わり合っているとき
- 私人が公権力の発動に近い機能を発動している場合
補遺
憲法の規定にも私人間に絶対適用されるものと、絶対適用されないものがある。上の話は微妙なものに対する話。
判例
判例はすべて間接適用説
裁判所は間接適用説をとることを明言。国レベルの力の差から生まれる私人間の支配関係もあるが、どうなっていたら国レベルと言えるかの判定は困難。国の権力の基礎と会社みたいな社会的権力の基礎は全然違うので、社会的権力に憲法規定を直接適用はできない。
大学の裁量権にも限度はあるが、思想による退学処分は大学の裁量権の範囲内
国がやったことでも私人として行った行為なら憲法の直接適用はできない
問題 (予備試験令和元年・憲法行政法・短答 第1問)
http://www.moj.go.jp/content/001294580.pdf
No.1
これはその通り。
No.2
「」内は間接適用説を取るときの、三菱樹脂事件の判例に類似。間接適用説は民法1、90条に憲法の気持ちを読み込む(私法規定の解釈)ので、これは間違ってる。
No.3
正解は1,2,1
参考:
芦辺のコピペに近いサイト